Column

【特集】RIO TO TOKYO
②ブラジル出身日本代表パラリンピック選手特別取材【後編】

Date :2020.01.16

佐々木ロベルト泉選手のインタビュー後編です。

(前編はこちら:https://haku-brasil.com/interview/2019/11/post666/

今年2020年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックの年です。
そんな中、日本代表パラリンピック選手、佐々木ロベルト泉選手にお話を聞かせていただきました。


【佐々木ロベルト泉選手プロフィール】

インタビューさせて頂いた時の佐々木ロベルト泉選手

佐々木ロベルト泉選手 41歳 (2019年11月時点)
パペレシアル品川 所属

ブラジル・サンパウロ・ゾーナ・ノルテ(北区)出身
5人制サッカー日本代表選手、夫で、2児の父
1997年2月 18歳の時に来日


それでは、貴重な佐々木選手のインタビューの続きです。

ジュリアナ:いよいよ今年は東京パラリンピックですが、準備はいかがですか?

ロベルト選手:残すところ約7ヶ月ですが、今後どのようにチームニッポンが成長するのか、自分自身も期待しています。

選手同士、違いがある上で、違いを尊重しながらチーム力を高めていきたいと思っているし、自分もレベルアップしていきたいですね。
そのために前よりフィジカル強化や食事制限などもしています。
日本人は小柄だから、海外の選手と戦うためにはフィジカルの強化はマストですね。

4年前、自分の母国でもあるブラジル・リオパラリンピックに出場できなかった悔しさを東京で晴らしたいですね。

ジュリアナ:リオパラリンピックに出場できなかったというのも東京にかける想いが強くなる理由の一つですか?

ロベルト選手:はい、それもありますね。
リオパラリンピックを現地で観て、こういう舞台でプレーしたいというのを感じました。
リオの街中を車で走って、選手村も素通りして、ホテルに向かっている自分がいるのがすごく悔しくて。

今回日本は開催国枠で出場を決めていて出場するチャンスがあるので、期待に応えたいという想いが強いです。

ジュリアナ:東京パラリンピックの目標は?

ロベルト選手:どのアスリートもそうだと思いますが、メダルです!
ただ参加したいわけではない。「頑張ったね」とか「すごいね」の褒め言葉や賞賛もいらないです。

とにかくメダルが欲しい。

ここで結果を出さないと日本のブラインドサッカーって変わらないと思うんですね。
逆に言えば、今メダルをとればブラインドサッカーという競技がより注目されると思いますし、もしかしたら次回2024年の仏・パリパラリンピックではもっといい色のメダルを取りに行こう!って思ってくれる人がいるかもしれない。

2019年7月ブラジルとの練習試合のため、岩手県遠野市に遠征した日本代表。

ジュリアナ:東京パラリンピックがブラインドサッカーを変えるきっかけとなればとおっしゃっていましたが、今現在佐々木選手が思う日本ブラインドサッカーやパラスポーツ全般の問題点はあるんですか?

ロベルト選手:正直、日本でのブラインドサッカーは世界に比べ、遅れているところがあります。それは否めないですね。
試合や遠征で海外へ行くと、施設の充実さや選手の待遇に驚きます。
強くなるために、結果を出すために、設備を整えたり、選手に投資する必要があると思うんですが、日本はその投資がまだ欠けているように思います。
正直にいうと、パラリンピックの強化選手に対しての助成金の面でも、自分が住んでいる地域からも全く受けられておらず。これは本当に残念なことです。

だから、もしせめて銅メダルでもいいから東京パラリンピックで結果を出せば、次回のパリパラリンピックに向けて何かが変わるかもしれない。そう切に願ってます。

ジュリアナ:今まで自分が努力して練習してきた成果を発揮するためにパラリンピックに出場するのではなく、日本のブラインドサッカー・パラスポーツのために結果を追い求めているんですね。

ロベルト選手:今まさにここで変えていかないと。東京パラリンピックはそのきっかけになればいいなと思います。自分のために戦っているというよりかは自分の下の世代が活躍できるように環境を整えていきたいです。

ジュリアナ:2016年リオパラリンピックのブラインドサッカーを観戦して、目が見えているかのようなプレーに心底すごいと思ったんですが、試合中の相手との距離感ってどうやってとるんですか?

ロベルト選手:こればっかりは、「慣れ」ですね。
僕自身も気づかないうちに少しずつ身につけたものです。

突然視覚を失って目の前が真っ暗になって、しばらくはやっぱり物によくぶつかったりしていました。でも少しずつそれも減り、なんというか虫とかでいう超音波的な音が聞こえてくる感じです。人と話している時は相手のちょっとした動き(首の傾け方や声のトーン)で相手がどこを見ているのかを正確に捉えていました。

(実際インタビュー中も、視線を外に向けた際に「今外見てるでしょ」とすぐにバレていました。これには本当に驚き!)

ジュリアナ:リオパラリンピックではブラインドサッカーはすごい盛り上がりを見せていたように思いましたがどう思いましたか?

ロベルト選手:実際にパラリンピックという大舞台は観客も多いし、関心度も高かったと思います。でもブラインドサッカーが観たくて観戦しに来ているというよりかは、何かの競技と競技の間に空いた時間があったからという観戦者も多かったと思う。その証拠に地域リーグとかになると観客はグンと減りますし。

ジュリアナ:そうなんですね。現地で観た感じ、みんながすごい楽しんで観戦していたように思えたので。正直私も衝撃を受けた一人なんですけど、こういっていいかわからないけれど、すごい楽しかったですしもっと観たい!って思ったんです。
だからぜひ聞いてみたいと思ったことを聞いてみますね。
障害者スポーツに対して「面白い」って言ってもいいですか?

ロベルト選手:(笑)もちろんです!!!そう言ってもえることが一番の喜びです。
選手としていいますが僕も「とても楽しいし、やっていて面白いんです!」

見たことない方は、「目が見えてないし、チンタラ走ってるんじゃないか」って思われるんですけど、そんなことは全然なくて。
全力で走るし、全力でボールを取りに行く。パス、シュート、ドリブル…スピード感ある競技です。
あたかも見えているかのようなプレーに圧巻するはずです。

観客がそれを観て「楽しい」と思うのはもちろん、
プレーしている僕たち選手自身が楽しんでやっています。少なくとも僕はそうです。

だから面白い!楽しい!と思ってくれるのは嬉しいことですし、
障がい者スポーツに対して変な配慮をするのは嫌ですね。

ジュリアナ:佐々木選手、本当にありがとうございました!楽しいお話ができて、あっという間の時間でした。東京パラリンピック応援しています!

ロベルト選手:ありがとうございます。頑張ります!みなさんぜひ応援してください。


今回は本当に貴重なお話を聞かせていただきました。

「パラリンピック」「障害者スポーツ」というテーマを扱うと様々な声が聞かれます。
腫れ物に触るような、そんな繊細さを感じます。

パラリンピック選手や障害のある方に対して、言葉をもっと選ぶべきでは?失礼に当たらないかな?とか。
実際そういう声を直接聞いたこともあります。

一人の人間として思いやりを持って、人の気持ちを考えて行動・発言しないといけないと思いますが、それは障害者・健常者に限らずみんなに対してそうだと思います。

障害があるから意識することではなく、相手が「人」だからそうするのです。

 

佐々木選手がインタビュー中に、
「誰もが誰かを必要として生きている」という言葉にとても感銘受けました。

健常者の人たちは何もかも自分の力でやっていると思っているかもしれないけど、それは違う。
みんな誰かの力や助けがあるから生きていける。

「僕は目が見えないから、電車に乗るときに誰かの手助けが必要なだけ。」

みんな、「誰か」を必要として生きている。人とはそういうものじゃないかな。何も僕が特別なことではない。


圧巻のプレーが東京で観戦できるチャンス!
2020年1月15日よりパラリンピックチケット第二次抽選開始です!

私が衝撃を受けたようにきっと衝撃を受けるはず!楽しいです、面白いです!まだ間に合います。


もっとブラインドサッカーのことを知りたい!!

今回佐々木選手のお話を読んで、もっと知りたいという方、ぜひ以下のリンクも見てみてください!

佐々木ロベルト泉選手 所属チーム「パペレシアル品川」
https://papelecial.org/
かっこいいホームページです!

NHKアニパラ 「ブラインドサッカーの回」
https://www.nhk.or.jp/anime/anipara/detail01.html
アニパラとは…パラリンピック競技の魅力を、日本が誇る文化「アニメ」で世界に発信するプロジェクト。

武井壮のパラスポーツ真剣勝負「ブラインドサッカー編」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/hirumae/paraspo/20171124.html
武井壮さんが本気でブラインドサッカーに挑戦します!
本気でやっているからこそ競技の難しさがわかる動画で面白いです!

ブラインドサッカー協会
http://www.b-soccer.jp/

LINK